【2018年の料理】
2018年
1月に立てた目標
「定番となるような料理を10品開発する」
結果を発表します。
これは、お客さんの反応はもちろん、スタッフの作業工程、安定した仕入れ、安定した提供、などを考慮し、
最終的には、きのしたの独断で選んだものです。
なので、みなさんの印象と多少のズレがあるかもしれません。
では、
2018年
●1位
「カリっと焼いたじゃがいもときのこ」
つまみにはもってこいの「じゃがいも」
「フライポテト」ではなく、つまめる料理をと考えてました。
考え続けた結果はいたって簡単。
少し多めの油で揚げ焼きのようにしただけ。
もちろん、じゃがいもの下処理、切る厚み、よりカリっとなるようにオーブンで仕上げたり、タイムの香り、
そして、仕上げのトリュフオイル、食べる時のゲランドの塩、など、
まあまあ工夫はしてますが、
基本的にはとてもシンプルな料理です。
このシンプルさが最もPicassoらしかったかな、との思いで1位です。
●2位
「うに風味のオムレツ 軽く炙って」
※ピリカラソースは「厚焼きたまご」
たまごには少し多めの生クリームとうにのソース。
上からも、うにクリームソースをたっぷりかけて、バーナーで表面を焼きます。
香ばしいソースの少し焦げた香りとクリーミーなうにのソース。
トロトロの食感。
リピーターが多い料理でもありました。
1年中安定してお出しできるのもいいです。
また、どうしてもうに味に注目されがちですが、たまご料理で肝心の「たまご」も何年も前からずっと「奥久慈卵」のみ使ってきていたので、その旨みを生かせる料理がやっとできたな、という感じでもあります。
濃厚なうに味に対抗できるくらいしっかり味のたまごです。
●3位
「きのこの塩麹マリネ」
これは正確にはメニューには書かれてません。
盛り合わせや複数の料理にちょこちょこと登場しているアイテムのひとつです。
しいたけ、シャンピニオン、エリンギ、しめじなどを少量の油でゆっくり炒め、塩麹、すし酢などで含め煮のように仕上げます。
それでも完全に「和」という印象にならないのはちょっとガーリックを効かせてあるからかもしれません。
なので、ワインでも日本酒でもビールでもどんなお酒とも素直に合います。
そのままでも、料理の一部としてもオーケー。
焦がしバターソースと合わせて魚のソースになったり、
ポン酢ベースのドレッシングと合わせて、あん肝のソースになったり、
薄切り肉のサラダのような料理でちょっとアクセントになったり、と。
これからも、なかなかマルチな活躍が期待できる万能アイテムです。
●4位
「山形豚ロース肉300グラム 低温調理で」
いよいよ「低温調理」に手を出した年でした。
科学の力と理論によって、よりおいしい調理方法を、という考え方は正しい、と納得しました。
普通に焼いただけでは「旨さ」よりも「かたさ」が勝ってしまう肉でも、科学の理論に基づいた火入れを施すことで心地良い食感で、なおかつしっかり旨みが感じられる料理になります。
もちろん、すべての食材がこの調理法に当てはまるわけではないでしょうから、これからはより適した使い方を「選んで」いくのが必要かと思います。
そんな中、
「アメリカ産の牛肉赤身」「鴨胸肉」「厚切りの豚ロース肉」は衝撃させ感じる出来といえるかと思います。
この中であえて「豚ロース」を選んだのは「牛赤身」も「鴨」ももちろんおいしい仕上がりではあるのですが、仕上がりの見た目やみなさんの過去の経験からして「想定内」と思われたからです。
「豚ロース」が最も「想像していたよりおいしい」という感想だった気がします。
※低温調理が最強、というつもりはありません。様々な条件などを考えるとウチの店には合っているのだろう、ということです。
3センチ以上の厚みの豚ロース肉をどういう営業条件の時もしっとりと仕上げられる、というのはやはり魅力的です。
唯一の難点はやはり時間がかかる、という点です。
これからは「予約」というやり方をもっと進めていきたいと考えてます。
●5位
「鮎のコンフィ」
多くの人のおかげで「養殖の鮎」はかなり安定した値段、品質で入手できる魚になったと思います。
季節感も感じられる点が日本人にとっては、よりうれしい食材なのでしょう。
つまみとして考えた時、
やはり骨を丁寧に取って食べる、というのは面倒に感じるものですし、料理屋と違ってひとり1尾ではなく、ちょっと一口ずつ、というリクエストが多いですから、
丸ごと食べられる「コンフィ」という調理法が適しているようです。
ワタの苦味も感じられますし、仕上げで表面をしっかり焼きますから、焼き魚のニュアンスもあります。
玉ねぎスライスの酢漬けとおろしたきゅうりを合わせたものと食べていただきました。
付け合わせとして、一緒に焼いたじゃがいもを添えましたが、これがなかなか好評で、のちに今回1位になった「カリっと焼いたじゃがいも」のベースとなりました。
●6位
「さんまのスモーク」
「鮎」同様に季節感満載でしかもより身近な魚が「さんま」でしょう。
今年は「燻製器」が活躍しました。
2、3年前から知り合いと共同開発してきた燻製器ですが、ほぼ完成形となりました。
もっとも私は最初の基本的な仕組みについて提案しただけで、そのあとは実際に使ってみての感想、問題点を伝えていっただけですが。
どんどんブラッシュアップされ、かなり使いやすい、「いい道具」になったと思います。
この「さんまのスモーク」も燻製器の最大の特徴である「冷燻がしっかりできる」を生かしてます。
さんまを塩焼きした後、骨を外します。
それをしっかりスモークし、提供前にオーブンで温め、仕上げに皮を炙って燻製の香りをより引き出します。
やはり「燻製」の香りというのはつまみとしてはいいものです。
一味違うさんまの塩焼、という感じになります。
ウチの店はこの「一味違う」というところが大切なんだろうな、と再確認した料理でした。
●7位
「インドまぐろ赤身のヅケとアボカドのサラダ」
おいしい「ヅケまぐろ」を、と考えていろいろまぐろを試してましたが、
四谷の名店「寿司金」さんの紹介で築地(当時)のまぐろ専門卸の「石司」さんをご紹介いただきました。
本来は近海ものの冷凍してないまぐろがメインの卸ですが、無理を聞いていただいてインドまぐろの冷凍ものを分けていただいてます。
描いていた「ちょっとねっとり感のある赤身ヅケ」になります。
ピリカラソースでは「ヅケまぐろ」としてもお出ししてますが、
やはりアボカドとの相性も捨てがたく、Picasso1でも出せる料理として考えました。
アボカドにもまぐろにもバッチリな「わさび」で全体をまとめてはいるのですが、完全に和風とならないように工夫しております。
これからもっと人気が出ていく料理かと思います。
また、周年や年末年始に特別に用意する「アイルランドの本鮪 中とろ」もすばらしいので、それももっと使っていくかもしれません。
※石司さんの現在の豊洲市場での店舗は「豊洲市場で最もスタイリッシュな店」と評判です。
●8位
「ほうじ茶のプリン」
プリンはずっと前は「ブリュレスタイル」の表面を焼くタイプ、
その後にごくシンプルなバニラのプレーンなものでお出ししてましたが、
昨今のコンビニスイーツの台頭により、プリンのレベルは著しく上がったと感じてます。
夜中でもごく当たり前に「おいしいプリン」が食べられます。
当たり前に黒いツブツブ、つまりバニラビーンズも使われ、バニラの香りも「本物感」が強くなってきてます。
※バニラビーンズの値段がものすごく高騰してますから今後この状況は変わっていくかもしれません。
そこでウチでは何年か前にプレーンなプリンはコンビニに任せるつもりでやめ、コンビニにない味のプリンを出すことにしました。
第1弾が「コーヒー」第2弾が「抹茶」でした。
ところが、抹茶に関しては抹茶関連のスイーツがどんどん開発され、しかもかなり本格的な抹茶感のものが多くなってきたので、危機感を感じてました。
そこで目をつけたのが「ほうじ茶」です。
香ばしい香りがスイーツに合うのかな、と思ってます。
実はほうじ茶の前にジャスミン茶で考えてたんですが、ジャスミン茶の香りは華やかで魅力的なんですが、プリンのクリーム感のほうが勝ってしまい、なかなか香りの特徴が生かせなかったのです。
屋久島で作られてる茎も混ざってるほうじ茶をかなり濃いめに入れ、クリームと合わせてます。
飲み屋ではデザートもシェアすることが当たり前なので「一口のインパクト」を大事にしてます。
なかなか濃厚なプリンに仕上がってると思います。
順位はここまで。
残念ながら目標の10品には届かず8品でした。
他はいずれも「もう少し変わっていくかも」という感じです。
「半田そうめん」は麺のクオリティは申し分ないです。
あとは提供の仕方でしょうか。
定番の「ガスパチョのツユ」の他、
「カレーそうめん」「鴨とやさいのスープ」など、
しっかりまとめて2019年のベスト10には入ってくるはずです。
また、このそうめん屋さんによる「パスタ」がまたすばらしいので、それもランクイン目指します。
低温調理と抜群の相性の「合鴨」
こちらを使った料理もいろいろ考案中です。
季節ものでは
「ふきのとうのリゾット」
それと
「たけのこのフライ」
煮て下味をつけた、たけのこのパン粉フライ、
かつをぶしとポン酢で仕上げてま
す。
これらも2019年で3年目となりますから、しっかり確立させていきたいものです。
最後まで迷ったのはチョコレートのスモークの「クランキージェットシティ」
クランキーチョコにラフロイグを塗り一晩なじませ、燻製をかけたものです。
かなり完成度は高いものの、知名度が低いです。
食べた方にはかなり評判がいいので、これも2019年にはランクインが期待されます。
以上です。
2019年もいろいろ悩んで、それでも楽しく考えていきたいと思っております!